計画内容
酸ヶ湯から大岳環状ルートで仙人岱を経由し、大岳東面と赤倉大斜面を滑走、箒場へ縦走する。
メンバー
nekoさん(リーダー)、Sさん(3ヶ月ぶりの復帰スキー)、Kさん(飛び入り参加)、ふくろう(記録)
当日の様子と感想など
朝、集合場所の箒場に着くと、当初参加予定だったMさんがトラブル発生につき欠席とのこと。
それでは3人で行きましょうと車に荷物を積み込んでいたところに、颯爽と現れたKさん。
「飛び入り参加してもいいですか?」とのことで、代打?Kさんと4名で酸ヶ湯へ移動した。
酸ヶ湯に着くと大岳をはじめとする八甲田の山々は、凄まじい速さで流れる雲に覆われていた。
西の風は相当の強さであることが窺えた。
このようなコンディションで風裏地形を繋ぐルートでは、どの程度風を防ぐことができるものなのか。またとない学びの機会にワクワクしながらスタートした。
酸ヶ湯〜仙人岱まで
樹林帯は予想通りたいへん静かなものだった。樹木があるだけでこんなにも穏やか。
地獄湯ノ沢へ降りる冬季ルート目印が、だいぶ色褪せてきている。

湯ノ沢に降りても風はなかった。全く山は行ってみないとわからないものだなと思う。


銚子の首を過ぎると左手に登山道が見えたが、沢の中は相変わらずフラットでとても歩きやすい。
いつもの雪庇も楽に登ることができた。この辺りから風が強まる。

雲の高さがちょうどよく、大岳と小岳の鞍部は視界良好。

と思ったら急に空が晴れ、大岳が姿を現した。こちら側は風が強過ぎて登ることはできない。
もう少し東側に回り込んでから、万年岩を目指して取りつく。ハードシェルとヘルメットをここで装着した。
大岳の東面へ
雪は白と茶のミックスで緩んでおり、センター幅が100ミリを超える私とSさんはエッジが噛まずにズルズルと脱落。
せっかく登った数メートルを恨めしげに見上げ、スキーアイゼンをつけた。

初めは左上から強風が吹きつけてきたが、右にトラバース登行しているうちに徐々に弱まり、今度は右上から吹いてきた。
山に西風があたり、左右から巻いてきている証拠だ。



Sさんは足首骨折から3ヶ月スキーを休んで、今回が復帰戦。
この冬はみなさんの記録を眺めるだけの日々だったそうで、今日こんなに素晴らしい青空の下を登れて本当に良かったと思う。

万年岩よりだいぶ高いところ、ほぼ外輪まで登り滑走準備をした。

Kさん

Sさん

neko会長
上の方はまずまずのザラメ、しかし微妙につんのめりスピードを上げられない。
適度に落としたら井戸岳の方へトラバースしながら降りた。
赤倉大斜面へ
降りたところで昼休憩をし、再びシールをつけて赤倉大斜面へと向かう。


その途中みるみるガスがかかり、一時はひどいホワイトアウトになる。

笛を吹いたり声を出しつつ、互いの位置を確認した。
井戸岳の登りは拍子抜けするほど楽だった。まもなくドロップ地点に到着した。
過去赤倉大斜面まで二度、銅像茶屋から遥々エントリーしていた私には目から鱗、というか灯台元暗し的ルートだった。これからは気軽に行けるなあ。

そこは真っ白な爆風地帯。でも一瞬だけ雲が切れる瞬間もあった。

待っていれば視界が回復する瞬間はありそう。とりあえず滑走準備に入る。
物を飛ばされるアクシデントが起きないといいなあと思っていた矢先、Sさんのシール袋が飛んでいく瞬間を目撃してしまった。私もしゃがんで動画を撮っていたら向かい風で後ろ向きにひっくり返った。風速は18mほどだろうか、身の危険を感じるほどではなかったが、侮れない…

あまりの強風に根負けした感じでフライング気味に滑走スタート。
すぐに雲の下に出た。目の前がとつぜん開け、視界が広がるドラマチックかつ大好きな展開に、声を抑えることなどできなかった。叫びながら大斜面に飛び込んでいった。

大感動の滑走の様子は、どうぞYouTube動画をご覧ください。
雪はまだノーストレスなザラメとは言い難かったが、弱腰はこのような大舞台に対して失礼と思い、そこは気合いでねじ伏せていった。

井戸沢を超えて振り返る。ついさっきまでいた荒れ狂った世界は遥か彼方。

何度も振り返り、遠ざかる斜面を確認した。

高田大岳の脇をすり抜けながら長いトラバース滑走は続く。
雪は見事なストップスノー、また小沢をいくつも超える。
足並みが揃っていたためいずれもスムーズに通過していく。そういえば今日は滑走中の転倒者はいなかったな。

ところが、である。
箒場まであと少しというところで、前を滑走していたKさんのビンディングのヒールピースがポロッと外れて転がっていった。経年劣化による樹脂部分の損壊。(中古で10年ものだそう)
朝ちょうど、樹脂製のビンディングは数年で割れてくるらしいよ、と皆で話をしていた矢先だったので、これには本当に驚いてしまった。山の上で壊れなくて本当に良かった。また、そうなった時の対処についても真剣に考えておかねば。明日は我が身。

無事下山。
厳冬期の強風と違い、春は少し余裕ができる。
風を避け、急斜面を極力使わないコース取り。風速に対する自分の限界。爆風下での物の取り扱い。安易に別行動を取ることのリスク。などさまざまな学びを得ることができた。
何より、あのドラマチックな大滑走は、単独ではできない醍醐味だ。
仲間と山に心から感謝したい。
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