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北穂高 滝谷第四尾根

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 松本駅に降り立つと、市内の高校の書道部が書いた「山に親しみ、山に感謝し、私達はこれからも 山と共に生きる」という大きな作品が出迎えてくれた。なんかうるっと来た。
今年から8月11日が山の日と制定され、上高地での式典に皇太子様がご出席なされる。皇太子ご一家が松本へそろそろお着きになるとのことで、駅の外では人が集まっていた。せっかくなので国旗をもらい、お出迎えした。
テレビを見たら、男子体操団体が金メダルを獲ったニュースがしきりに流れている。うれしい。パワーをもらえた。

 

【8.11.木】 快晴
上高地 7:00 - 涸沢 13:15-14:00 - 北穂BC 17:35

皇太子様がお見えになるので、交通規制があるとのこと。渋滞にはまらないよう、いつもより早く相棒と合流する。
途中の平湯でトイレに入ると、なんと3週間前に会ったH.Yさんがいたのでびっくりした。彼も穂高が好きらしい。四尾根と屏風のアドバイスをもらうことができた。
早出したのが功を奏し、渋滞にはまらずに予定通り上高地へ着くことができた。

相棒は、とりあえず昨年の残りの滝谷第四尾根へ行きたいとのこと。天気予報は5日間晴れマークが続いている。自分としては、四尾根はさくっと片付け、できるなら屏風岩も狙いたいと告げる。「やっぱりそう来たか。。。」と相棒は苦笑い。屏風には消極的。去年はあんなに意気込んでいたのに…。
四尾根だけならシングルのほうがスピーディなので、ロープをシングルにするか、ダブルにするか迷っていたが、ダブルにしてくれたので一安心。これで屏風にも挑戦することができる。重いが、頑張って北穂までテントを揚げることにする。

徳澤では、ルーティーンのようにソフトを食べる。気温が高く、本谷橋や涸沢では水で顔を洗い、涼を得る。水もたくさん飲みながら、休み休み登った。今まで穂高で虫で苦労したことはなかったのに、虫がたくさんいて大変だった。それほど暑かった。北穂のテン場は、ほぼ満員御礼。小屋までは15分ほど離れているので、トイレに行くのも一苦労した。

 

【8.12.金】 晴れ 弱風
C沢左俣下降 5:25-小コル7:25-取付7:40-9P目終了12:15-縦走路12:45

資料によると、第四尾根は滝谷の中でも長大な尾根であり、縦走路から見れば滝谷最奥に位置することと、思いの外、複雑な内容から最も滝谷らしいクライミングができるルートとして人気の一本。荒々しい滝谷の障壁に囲まれながら好感度満点のリッジを緊張感に満ちながらの登攀はアルパインクライミングの醍醐味とも言えると書いてある。

松濤岩の基部からC沢をのぞき込むと、延々と急なガレが続いている。これを下りるのか…。ガレ場核心とも言われる四尾根。落石をしないよう、静かに下りて行く。どうか先行パーティがいないようにと願いながら。
前方左上のドーム中央稜の取り付には、もう準備している2,3パーティが小さく見える。その下をトラバースしながら下る。涸棚では懸垂用の支点があり、懸垂した。
右俣との二俣から小コルに乗越す。慎重に下りたので2時間もかかってしまった。今年は雪が少ないので、コルには雪が残っていなかった。
C沢左俣を振り返って見てみたら、あまりの急さによく下りてきたものだと自分に感心し、写真におさめる。すると、パーティ1が下りてくるのが見えた。ラクをさせながら、スピーディだ。

取付きから易しい岩と草付を登る。コンテでもよかったが、スタカットで2ピッチ登ったため、後ろのパーティに追いつかれた。

 

【1ピッチ目】 大まかな岩のAカンテ 40mⅢ  H
予告なしに私が登ることになり、ちょっと緊張する。でも、カンテなので大丈夫そうだ。傾斜もそんなに強くない。ホールドも支点も豊富にあり、どんどんランナーを取りながら登って行く。
高いところに終了点を作れなかったため、ロープを引く体勢が悪くなり、スムーズに作業できず、相棒に怒られる。

 

【2ピッチ目】 水平リッジから磨かれたBカンテ40mⅣ+ ~ 水平リッジ 40        mⅠ  K
フリクションを利かせて、登る。Ⅳ+もあるようには感じなかった。朝日に向かって登って行くので、気持ちがいい。

 

【3ピッチ目】 傾斜の強いCカンテ30mⅢ   H
Aカンテより傾斜が強い分、緊張した。そのまま4ピッチ目へ突入。

 

【4ピッチ目】 ピナクル脇に伸びる凹角 30mⅢ  H
目の前にはピナクルまで真っすぐ伸びる凹角が現れる。それほど難しくなかった。ロープがいっぱいになり、途中の支点で切った。

 

【5ピッチ目】 ピナクル脇に伸びる凹角の残り ~バンドを左へ 30mⅢ  K
相棒の写真を撮ろうとしたら、カメラケースを落としてしまう。拾いに行けそうだが相棒から×される。後方のパーティにメモを残し、拾ってきてもらうことにする。ピナクルの左から抜けたが、支点見つからず。バンドを左へ回り込むと、支点がたくさんあった。

 

【6ピッチ目】 フェースから凹角内のクラック 30mⅢ+  H
右のフェースを登りながら左上した。浮き石が多く、手をかけてももろくて気を遣った。

 

【7ピッチ目】 懸垂20m K
ピナクルの上のほうにしっかりした支点があった。後ろのパーティがぜんぜん来ない。

 

【8ピッチ目】 リッジ左フェースからチムニーへ 25mⅣ  K
この8・9ピッチ目が核心。チムニー苦手なので、相棒に行ってもらう。出だしがちょっと悪かった。チムニーは思っていたのと違って大きくなく、手を奥に伸ばすとガバホールドがあったので、思ったよりラクだった。

 

【9ピッチ目】 傾斜の強いDカンテ ~ かぶり気味の2つのカンテを越す
40m(10.a) Ⅴ  K

相棒、切らずにそのまま9ピッチ目へ突入。最後のハングっぽい乗越は、左手をカチにかけるとぽろっと剥がれた。違うところにかけても剥がれたので、A0して岩角まで手を伸ばし、何とか乗り越えた。

 

 

縦走路に人が歩いているのが見えた。草付きを一応、アンザイレンで登って行った。長い四尾根は時間がかかると覚悟していたが、終わってみるととても速かった。
でも、後方パーティからカメラケースを受け取ったのは、それから3時間後だった。すれ違う登山者とオリンピックの話(愛ちゃん負けてメダル取れず、残念)や大キレットの苦労話、山の話などを聞いて、時間を潰した。かんかん照りの下でも、アルプスの景色はいくらでも見ていられた。

 

無事にN山岳会の方達からカメラケースを受け取り、縦走路を急ぐ。

喉が渇きすぎたので、北穂小屋に直行し、ビールを飲むことにする。すると…なんと、Sさん達(ドーム中央稜で先行パーティだった)がいて、びっくりする。1年ぶりの再会。うれしすぎる。昨年、あれから屏風岩雲稜ルートにも登ったと聞いていたので、まずは「おめでとう!」と告げる。そして、自分たちも明後日、屏風に行くと教える。無事に踏破できるよう、パワーを分けてもらうために握手してもらった。Sさん達は、明日クラック尾根を登るそうだ。元気そうで何より。とても楽しいひとときだった。

 

【8.13.土】 晴れ
北穂BC - 涸沢 - 横尾BC

横尾でゆっくりしたいので、いつも通り早めに起きた。雲海が美しい朝だった。常念の頂が浮かんでいる。
テントを撤収し、トイレに行った帰り、C沢左俣を下降しようとしていたパーティを見つけて、相棒が寄っていく。5人ほどいたが下降に入り、男性が1人、準備のため残っていた。
話をしていると、ヘルメットの「廣川健太郎」という名前が目に入った。「えっ?あの『チャレンジ!アルパイン』の廣川健太郎さんですか?」と尋ねると、「今はただのおっさんですけどね。。。」と謙遜気味に答えた。思わず「握手してください!」と、言うが速いか、手を差し伸べていた。快く握手してくださって、うれしかった。相棒もちゃっかり握手してもらっていた。明日の屏風に向け、またパワーをもらったような気がした。

登りの時は苦しくて、ぜんぜん余裕が無く気づかなかったが、北穂南稜には木いちごがたくさん実っていて、食べながら下った。初めて食べる相棒も気に入ったみたいだった。
涸沢ヒュッテでオリンピック情報を聞いたら、内村選手が個人総合でも逆転金メダルを獲ったとのこと。ほんとによかった。
涸沢から本谷橋への下りも、ブルーベリーがいい色になっていた。大きめで黒いのを選んで採って、相棒にあげた。甘酸っぱくて疲れた体に染みた。
偶然にもいろいろな人に出会って、パワーをもらうことができ、相棒は「神ってる!」と、しきりに言っていた。お天気にも恵まれ、ラッキーだった。

 

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C沢左俣下降
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C沢左俣
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Aカンテ
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Bカンテ

 

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Bカンテ
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Cカンテ?にいる後パーティ
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Dカンテ
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終了点
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前穂
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手前 北穂東稜 常念頂にはご来光

 

 

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