キリマンジャロは、日本から12000Km、赤道近くのタンザニアにある5895mのアフリカ大陸最高峰の独立峰です
シラ峰、キボ峰、マウエンジ峰から成り立ち、キボ峰が最も高い
富士山を大きく、かつ平たくしたような形で、赤道近くとは言え山頂付近には氷河が残っています
ただ、近年の温暖化でかなり消滅が進み、近い将来無くなると言われています
高さの割には、特別な登山技術は必要なく、体力と精神力?(根性)さえあれば誰でも登れる山と言われています
主なルートは5つありますが、今回私達は日本人の9割が使うマラングルート(コカ・コーラルート)ではなく、56Kmで最長のレモショルートを使って登山してきました
このルートは長いので体力的には大変ですが、風光明媚で、景色の移り変わりも楽しめ、日にちをかけるので高度順応しやすく、また利用者も少ないので、ゆったり、のんびりとトレッキングできるうれしいルートでした
気候的には6~9月が乾季で冬、参加した1月は小雨季で夏ですが、登るごとにどんどん気温は下がり、朝起きるとテントがバリバリに凍り付き真っ白になっていました
また、『キリマンジャロ登山』とは『外国人のための観光登山』で、日本のアルプス登山などとは全く異なり、至れり尽くせり登山です
私たち6人に対して、ガイド、コック、ポーターなど24名のスタッフがTanzania/kuoritei(タンザニア・クオリティ)と呼ばれる非常に質の高いサービスを提供してくれました
陽気な人柄で、常に笑顔、歌、踊り、そして心の底から親切にしてくれます
もちろんこれが重要な観光産業であるからなのですが、気質が日本人と似ているのか
かゆいところに手が届く・・ような気づかいが出来るのです
これはネパールトレッキングも同じで、驚くような新鮮さを味わう貴重な体験で
した
1月7日―8日
羽田空港~ドーハ空港(トランジット)~キリマンジャロ空港
フライト時間・・約20時間
1月9日
現地ガイドさんと登山のブリーフィング(打ち合わせ?説明会?みたいな感じ)
朝夕の血中酸素の測定と、朝は聴診器で肺の呼吸音を聞き、心拍数の測定もするとの説明を受けた
高山病の予兆もさぐれるようだ
この会社のガイドさんはそのメディカルチェックの資格も持っているらしい
午後はガイドさん達とモシ市内観光(モシ市はキリマンジャロ登山の登山基地となっている)
市街地は33度もあり、早々に切り上げて キリマンジャロビールで乾杯!
1月10日
バスの屋根と後部座席に大量の荷物を積み込み、さらに総勢30名の人間が乗り込み出発
国立公園管理事務所(ロンドロッシゲート)で厳重な荷物計量が始まる
スタッフ一人に対して自分の荷物以外は15kgしか許可されない
そしてスタッフのシュラフや防寒着、革靴などの装備もチェックされる
これは、国として、ポーター達が外国人によって酷使されないように守るためのシステムであり、装備チェックはスタッフの健康と安全管理の為に大切であり、両方ともとても合理的な事であると思った
長い長い検査が終わり、ようやくレモショルートゲートへ
ゲートにいた管理人二人は普通にライフル銃を携えて、こちらの準備状況をじっと見ている。何も違反はしてないよねと自問自答しながらも本物の銃にビビってしまう
だってキリマンジャロ登山にはペットボトルの持ち込みも禁止されており、そんな事も知らずに水でも飲んでいたら大変な事になる(銃で何かされることは無いだろうが(笑)罰金は取られるそうだ)
準備が整うと、スタッフ全員でKilimanjaroの歌と踊りで登頂を祈ってくれた
初めて体験する歓迎行事に感動した
歩行時間3時間 亜熱帯 初めて見る花が多い
Mti Mkubwaキャンプ場(2895m)
1月11日
朝、キャンプ場にコロブスモンキーが現れ、みんな大騒ぎで写真タイム
サルオガセの森を抜け、草丈も低くなり見通しが良くなる
今日も花がたくさん。アフリカと花はあまり結びつかなかったが、これほど多いとは。夏だからという事もあるだろう
単調な歩きに彩を添えてくれる
キャンプ場に到着すると、さっそくテントまで洗面器にお湯を入れて持ってきてくれた
体を拭き、手足を洗えるのである。湿気がないので汗もあまりかかないが、これがあるから風呂に入れなくても我慢できる。
歩行時間7時間 森林から高原
シラ1キャンプ場(3505m)
1月12日
平均的な朝のスケジュールはこんな感じ
6:30 モーニングティー(就寝用テントにコーヒーとティーを運んでくる。これが目覚まし)
7:00 洗面器(洗面用のお湯を持ってくる。)
7:30 朝食(お粥。トースト、卵料理、ソーセージ、フルーツなど)
基本的にはダイニングテントで。
天気の良い日は外でも食べる
8:30~9:00 出発
きのう到着時にはガスで見えなかったが、朝、目の前にキボ峰が聳え立っていた
そしてダイヤモンド富士のように、てっぺんの中心から朝日が昇ってきた
ご来光に荘厳な気持ちで手を合わせていたら、ガイドさんも山をリスペクトするんだと言って一緒に祈りを捧げた。片言の英語でも気持ちは通じる。
その日の行程も終わる頃、泊まるキャンプ場が近くなると、スタッフ達10人が歌いながらホットコーヒーを持って迎えに来る『お迎えタイム』である。
それが、もうテント場は近い、もうすぐ到着だよ~という意味と(それでもそこから1時間は歩くのだけれど)、疲れた体に温かい飲み物はうれしく、さらにザックも受け取ってくれるので軽い背中に走り出したい気分になる
驚愕の、徹底したサービス精神である
歩行時間5.5時間 高原・荒地
シラ2キャンプ場(3850m)
1月13日
夜中、トイレに起きたらものすごい星に圧倒されて、しばらく戻れないで眺めていたら流れ星が2個も見えた
後で聞いたのだが、輝いていたのが南十字星だったらしい
サザンクロスと呼ばれるように、1個の星ではなく十字型に4個並んでいるのだ
その代り、朝、放射冷却現象でテントはバリバリに凍りついていた
素晴らしい天気なので外で朝食
今日は4000mの高度に体を慣らす為に コースから外れて近くのモイヤキャンプに1泊寄り道した
午後は、散歩で順応の予定だったがガスと寒さで中止。
時間が余ったのでキッチンテントで日本のシチューを作って教えた
タンザニアのジャガイモがおいしいので、とてもおいしいシチューになった
スタッフ達にも日本の味は好評だった
歩行時間3.5時間
モイヤキャンプ場(4200m)・・ついに4000m超えた
1月14日
高度順応のため Lava Tower 4642mまで一度登って 700m下る
今日はそのラバタワーでダイニングテントを張って、ホットランチに(温かい食事を提供)してくれるという贅沢。通常は朝ランチBOXを受け取るだけだ
しかしそこまでの道のりは長く6時間もかかってしまった
スタッフ達は昼食後テントをたたんで次のcamp場まで移動し、夕食に間に合わせなければならない。待ちくたびれたと思うが、到着を喜んでくれるばかりで誰も嫌な顔をしない。トイレテントまで設置して待ってくれていた。
今日のキャンプ場は他のコースからも合流するので込み合っていた
これでも良い方で、乾季の7,8月はテントが重なり合うぐらいになるという
国際色豊かで西洋人は圧倒的に若い人達のグループが多い
結局最後まで日本人とは一度も会わなかった
私たちのホットランチのせいで、到着がおそくなったスタッフはテントの張り場所にかなり苦労したようだ
だって、就寝用テント5、ダイニングテント1、キッチンテント1、スタッフ用テント2、トイレテント1
これをまとめて張らなければならない
感謝感謝、すまぬすまぬ、である
各チーム共に同じで、そこここに テントのかたまりが出来ていた
歩行時間8時間 半砂漠
バランコキャンプ場(3950m)
1月15日
今日のスタートは、キャンプ地を出てすぐに取りつくバランコウォールという急壁である
朝一に取りつくのでブレックファストウォールとも呼ばれている
キリマンジャロ登山の一番の難所であるだろう
難しくはないが転げ落ちても困るのでストックをしまい両手両足で必死に登っていると、テントを撤収したスタッフ達が追い付いてきた
彼らはザックを背負い頭の上に20kgの荷物を載せ、片手あるいは両手でそれを支えながら黙々と登ってくる。どんなバランス感覚なのだろう
登り切ったと思ったら今度は谷底まで下らなければならない
ジャイアントセネシオの群落が続き、タンザニアらしい世界が広がる
谷の向こうの尾根に今日のキャンプ場が見えた
だが谷は深く、登り返しも急登で、まだまだかかりそうだ
尾根上にあるテント場から水を汲むためにバケツを持って往復しているスタッフの姿が見えた
あまりの申し訳なさに、到着すると持ってくる洗面器のお湯は丁重にお断りした
今日のキャンプ場の最終的な標高はきのうとほぼ変わらないのに
アップダウンの繰り返しがきつかった
歩行時間6時間 アルパイン
カランガキャンプ場(3995m)
1月16日
天気のパターンは大体、早朝は快晴、昼ころからガスが沸きはじめ、夕方か夜小雨がパラパラといった感じ
でも今日は早い時間から薄いガスに囲まれ、急坂を登っていても寒くて寒くて一向に体が温まらない
体の芯まで染み込むような冷たさだ
そういえば、下からみたkiliはいつでも雲をまとっていた
下界が暑いので、上昇気流が雲を作る
もうその中に入ってきたという事か・・
いよいよキリマンジャロに手が届く場所まできた
明日サミットに行く道も辿れるまでになった
テント場も今までの平地ではなく、岩場の隙間をえらんでテントを張るしかない
その狭い場所に各チームのおびただしい数のテントがひしめき合い、みなKili-summitに向けて準備しているのがわかる
ここがキャンプ場としては最高地点で、ここから山頂を目指すしかないので往復10時間、標高差1200mを一気に登って降りて来る。
それが5000mを超えた空気の薄い場所、平地の半分と言われる場所での行動なのだから苦しく無いわけがない
さらに下のテント場まで降りるグループがほとんどで15時間の歩行が要求されるからKili登山はきついのだ
夕方のミーティングで、PM11時起床、軽い食事を採って夜中1時出発を告げられた。寒さ対策の最終装備もチェックされた
明日は一人に一人ずつザックボーイがついてくれるという
夕食後早々にシュラフに潜り込むが興奮で寝付けない
歩行時間5時間
バラフキャンプ場(4673m)
1月17日
サミットの日の夜中1時、まばゆいばかりの星空の下出発する
先行するヘッドランプの光が延々と山頂に向かって続いていた
見上げるほど高い所にも明かりがあり、あそこまで行くのか・・と気が遠くなる思いである
最初は岩場で、暗闇の中、足下に注意する必要があったが、まもなく砂地のジグザグ道になり、何も考えず一歩一歩山頂に向けて歩みを進めるだけで良い
闇の中で静かな歌声が響いた
いつも陽気で歌の上手いスタッフなのだが、静かに静かに魂に染み込むような声で歌っている
それに呼応するようにスタッフ皆が歌いだした
これは祈りの歌で私達の登頂を願っているのだそうだ
それを聞きながら、ああ、私は今キリマンジャロに登っているのだと実感した
短い立ち休憩を繰り返し、その度にザックボーイが水を渡してくれ、何か欲しい物はないかと聞いてくれる
その優しさが嬉しい
朝焼けで辺りが明るくなると、氷河が見え出し、振り返るとマウエンジ峰が見守っている。歩けど歩けど変化のない登山道は精神的にきつい。しかし高山病にならないようにポレポレ(ゆっくりゆっくり)登山を続けるしかなかった
時間がかかりすぎていたので、2グループに別れる事にし、元気組は一気にステラポイントに向かう
ステラポイントとは5756m地点の事で、ここまで登るとKilimanjar登頂証明が出る場所だ
更にその先クレーターのふちを1時間位回り込むと、ウフルピークと呼ばれる最高地点5895mのキリマンジャロサミットがあるのである
富士山で言えば、吉田コースの久須志神社まで登ると富士山に登ったと言えるし、その先、お鉢巡りをして到達する剣ヶ峰が3776m最高地点である、という関係と全く同じである
それまでのポレポレ歩きから、かなりペースアップしたのにステラポイントはどこ?と聞いてもまだまだ見えない場所にいるらしい
これだけ長い事歩いているというのにだ・・
ついに、左に大きくカーブすると、WEBサイトで何回も何回も見たステラポイントの景色が目の前に出現した
やったー!!まさにその一言しかなかった。
でもそれで終了ではない。ガスが上がってきているのでウフルピークまで急ごうと、更に早く早くと言われるが6000m近くの標高で急げる訳がない
一歩一歩が重く遠く体力の全てを使ってたどり着いた感がある
みんな疲れ果てていた。ガイドさんも、ザックボーイも、メンバーも。
あとで振り返ってみると
いくらゆっくりでも、高い標高で12時間も行動しているとかなりのダメージがあるようだ
さらに全員、朝食もランチも食べていなかったんだなぁー
ポカリとゼリーとナッツ類と飴・・これだけで頑張った・・
もちろんランチBOXは受け取っていたが、時間が足りなかったのと、食べなければならないという思考能力も、お腹がすいたという身体的感覚も低下してしまったようである
ついに山頂!
みんなで喜びのハグを繰り返し、記念写真を撮って、ようやく終わった
長かったなぁ~と、それしか思えなかった
と、思ったのも束の間、当然長い下りが待っていた
下り専用ルートがあるとはいえザリザリ砂道で急斜面。もう足に力が入らず転げ落ちそうになるのでガイドさんがずっと支えて歩いてくれた
ロジャー、本当にありがとう
倒れ込むようにテントに入り、シュラフに潜り込んだ
今夜この場所でもう一泊できるという余裕のスケジュールがありがたかった
もちろん下のキャンプ場まで降りる元気はどこを探しても無かったけど・・
爆睡したらしく、友人がテントに戻った音でようやく目が覚めた。あのあと小雨だが降られたようで濡れてさらに大変だったらしい
『お帰りなさい』もそこそこに、二人で再び眠りに落ち、キッチンボーイが夕食だよーと迎えに来るまで前後不覚に眠り込んでいた
眠ったお陰で元気を取り戻し、ダイニングテントで夕食を美味しく頂いた
ペコペコのおなかにズッキーニスープがやさしかった
歩行時間 14時間30分 サミットデイ
バラフキャンプ場 4673m~5895m~4673m
1月18日
微笑むようなキボ峰がモルゲンロートに染まり出した
コングラチュレーション! 祝福されているように感じる
疲れていたはずなのに早く目が覚めてしまい、その移ろいをじっと眺めていた
素晴らしい朝の輝き、下界のモシ市は雲海の中
あの朝焼けの美しい山に、今日も苦しい登山をしている人達がいるのだ
無事に登頂してきて!と言わずにいられない
みんなそれぞれに満足感をたたえて朝の食事に向かう
はじけるような笑顔、会話も弾む
もう下るだけでホテルに戻れる~という気分だったのに、さすがに遠く、さらにキャンプ場に1泊する必要があり、2日がかりの下山だ
歩行時間 6.5時間 (途中でホットランチ有)荒地・亜熱帯森
ムウェカcamp場 3068m
1月18日
朝食後、スタッフ達の歌声が延々と聞こえている
??と思っていると、今日で解散なので、スッタフ同士のねぎらいや、お別れのダンスが続ているらしい
私達もその輪の中に入り、一人ずつのサンキューダンスを受けた
一期一会の仲間であることが寂しい
もう二度と同じメンバーで登山することはないのだ
本当にありがとう、お世話になりました
キリマンジャロ&ラバロックスタッフ
アサンテ・サーナ!
(スワヒリ語で どうもありがとうの意)
歩行時間4時間 熱帯雨林
ムウェカ国立公園ゲート
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