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冬山五座

二月に谷川岳に登った感想を問われたなら僕は、白毛門から朝日岳、そして新潟県境を経て一ノ倉岳へとつながり、オキノ耳、トマノ耳へと戻ってくる銀稜、さらにはオジカ沢ノ頭、万太郎山方面への従走路がすばらしい展望だったとか、一ノ倉沢の大岩壁が格好良かったとは言わないだろう。下山して残っている記憶は、ラクダの背から先の滑落と雪崩の恐怖と、ラクダの背が終わってからの深雪に喘いで登った急傾斜が大部分だ。ラクダの背で西黒沢側の長大な雪庇に注意し、マチガ沢側に滑落しないように慎重に足場を決めながら通過したら、雪に腰まで沈んで急登をラッセルし、この雪を崩して前進するという単調な重労働がいつ終わるのかと息を切って、一歩踏み出すごとに雪崩の不安を頭の中に濃くさせながら、ザンゲ岩の横を過ぎていった。標高千八〇〇メートル付近でのこの行動が予想できなかった。

冬に登りたい山が五座ある。正確には厳冬期に。

その中のひとつが谷川岳だった。なぜ谷川岳か。それはたぶん、山岳雑誌か、冬山ルート集を読んで五つ選んだのだろう。詳しい記憶はない。

ちなみに僕は若いときから一目ぼれをよくしていたし、気持ちが熱くなりやすかった。選ばれた五座もそんな感じだろう。逆に冷めるのも早いが、登山に関しては今のところ気持ちは萎えいではいない。それから予定を組むのが好きで、暦にたくさん記入する。

五座は自分の中では少し厳しいところもあるが、山は難しければ達成感もあるし、一生かけていたら時間的にはちょうどいいのではないだろうか。

同人と二人で一緒に苦労して踏んだトマノ耳、オキノ耳は特徴的なことはない。稜線上のちょっとしたピークに過ぎない。しかしそこまでの急な登りは重量級で、張り付いた雪量は、歩けば忘れられないほどに深く心に残るものだった。

 

21日(火)

8:25(谷川岳ベースプラザ立体駐車場出発)9:40(明るくなってきた気がする、風も弱くなってきた)10:10(尾根上鉄塔)11:45(高度1140付近泊場)13:40(雪洞入る)18:00(就寝)22:00(起きて除雪)22日2:00(起きて除雪)

22日(水)

4:00(起床)6:20(出発)7:40(ラクダの背始まり)11:31(ザンゲ岩)11:55(ザンゲ岩の上標高1850mくらい)12:29(肩ノ広場道標)12:40(トマノ耳)12:59(オキノ耳)13:15(トマノ耳)13:20~34(肩ノ小屋)14:19(熊穴沢避難小屋)15:30(ロープウエイ天神平駅)16:00(谷川岳ベースプラザ立体駐車場)

 

137 (54) 137 (89) 137 (95) IMGP2536 IMGP2538急斜面下降 IMGP2546 IMGP2533ラクダの背ナイフリッジ IMGP2563

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