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剱岳 チンネ左稜線

以前、室堂から登山道で剱に登った時は、それほど感動もなかった。水平歩道から裏剱を見に行った時は、あんなギザギザな岩峰は自分とは無縁なところだと思って帰ってきた。なので、剱からは遠ざかっていた。
でも、今年は八ツ峰やチンネに登ってみたいと思い、調べてみた。八ツ峰やチンネへのアプローチは、夏でも豊富な雪渓が残っているので、アイゼン、ピッケルが必携のようで、穂高に比べると体力面では、1ランク上のように感じた。
とりあえず、天気と体力次第ということで、行ってみることにした。

 

【8月11日】 曇りのち雨
立山駅(ケーブルカー)-美女平駅(バス)-室堂9:25-剱沢-長次郎谷- 熊の岩16:00

山の日なので、ケーブルカーはとても混んでいて、1時間弱待った。痛いロスだ。
バスからは、称名滝が見えた。さすが日本一落差がある滝なので、とても長い。
室堂に着くとガスっていて、立山(雄山)は下しか見えない。軽量化してきたつもりでもザックは重く、ゆっくりペースで登る。以前、歩いたのは10年も前のことなので、新鮮な気持ちで歩く。
剱沢キャンプ場からは、前剱は見えるが本峰は見えず。剱沢雪渓を下ると、目の前には源治郎尾根、八ツ峰が見えた。
平蔵谷出合を過ぎ、長次郎谷出合から詰める。熊の岩までは、見えているのに遠かった。覚悟はしていたが、本当に遠くて疲れた。
テントを張り終えたら雨が降ってきた。セーフ。熊の岩は、基本、幕営禁止となっているが、最終的に12張りほどテントが張られた。すごい混みようでびっくりした。水は流れていて確保できるので、ほっとした。
7月のバッドレスで会ったHさんパーティもいたので、いろいろと情報をいただく。
明日も天気が悪そうなので、Cフェースの簡単なルートでも登ろうということになった。

 

【8月12日】 雨のち曇り
八ツ峰Ⅵ峰Cフェース剣稜会ルート15:10-17:00Cフェースの頭-Ⅴ・Ⅵのコル -熊の岩18:00

朝から雨。昨日の疲れを取るのにちょうどいい。雨の中、Cフェースを登っているパーティを、よくやるなあと感心しながらテントから眺める。昼過ぎまでだらだらと寝て過ごす。降ったり止んだりを繰り返し、14時ころには空が明るくなってきた。岩が乾くのを待ちきれず、次々とCフェース、Aフェースへ、クライマー達が飛び出していく。
私達も、Cフェースへと向かう。
岩はところどころ、まだ濡れていたが、傾斜が緩いので大丈夫そうだ。混んでいてルートを少し外れたが、ランナーがとれる。
1ピッチ目 スラブ40m Ⅲ
2ピッチ目 凹角-フェース 40mⅢ
3ピッチ目 フェースを右上-左上-左のリッジへ 40mⅢ
4ピッチ目 水平リッジ20mⅡ
5ピッチ目 やさしいリッジ 25mⅡ
Cフェースの頭からはトラバースルートがあり、それを下った。このルートは八ツ峰縦走のルートのようだ。

 

【8月13日】 晴れ時々曇り
熊の岩4:27-池の谷コル5:30-三の窓-チンネ左稜線取付6:05-スタート7:20-チンネの頭15:00-クレオパトラニードル16:00終了-トラバース道経由-熊の岩19:00

ヘッテンを点して、長次郎谷右俣を詰め、池の谷乗越を目指す。途中、大きなクレバスが数カ所あり、迂回しながら登る。
乗越すと、雲海が広がっていた。岩峰たちの間から太陽の光が差し込み、陰影が絵になる。ガレガレの池の谷ガリーを落石しないように、三の窓まで下る。三の窓には、テント1張。チンネが見えた。左の稜線、あそこを登るのか。
雪渓をトラバースして、チンネの基部へ取り付く。振り返ると後立山連峰の山々が見える。
取付には、待っているパーティが3つくらいいて、その前にもたくさんのパーティがいるようだ。出発が遅かったなあと反省。
資料によると、「文字通りチンネの左端のリッジを登るもので、その眺めの素晴らしさ、高度感あふれる爽快さは国内のアルパインルートの中で随一のものだろう。人気も非常に高く、シーズン中は一日中人の列が絶えないほどだ。」とある。
1時間ちょっと待って、やっとスタートできた。つるべで登る。

1ピッチ目 凹角からバンド 20mⅣ
2ピッチ目 クラック-フェース-小ハング 50mⅣ
3ピッチ目 草付きバンド-ルンゼ 30mⅡ
4ピッチ目 フェース 20mⅣ
5ピッチ目 草付きリッジ 40mⅠ
6ピッチ目 フェース 40mⅢ
7ピッチ目 フェース 40mⅢ
8ピッチ目 ピナクルの林立するリッジ 50mⅢ
9ピッチ目 カンテ左のクラック-ハングを左上気味に越して右の凹角へ
40mⅤ
10ピッチ目 凹角-リッジ 30mⅣ
11ピッチ目 リッジ-フェース 50mⅢ
12ピッチ目 フェース-水平リッジ 50mⅢ

 

チンネの横にクレオパトラニードルが聳え立ち、絵になる。
9ピッチ目が核心。「鼻」と言われる部分が難しいらしい。言われてみるとなんか顔に見えてくる。
相棒、垂直カンテから左にトラバースし、ハングに取り付く。スムーズに乗越し、フェースを登っていった。
渋滞で前パーティのムーブを何回も見れたのとフォローだったのとで、自分も心配していたよりらくに行けた。
とにかく、渋滞で待ち時間が長く、いらいらしてしまい、頭に着いたのもわからず、もう1ピッチあると思っていたので、最後はなんかあっけなかった。頭は想像していたのよりもとても小さく、えっ?っと思うほどだった。

せっかくここまで来たので、クレオパトラニードルにも登ることにする。正面から見たらあんなに尖っていたのに、反対から見ると平べったくて案外登りやすかった。

そして、本当ならば、チンネの頭から懸垂して、池の谷ガリーへと出て熊の岩まで帰るのだが、登り返さないといけないので、私達はトラバース道を帰ることにした。途中からトラバース道が無くなり、だいぶ探した。が、無いので、Ⅶ峰・Ⅵ峰を登り、昨日のトラバース道を下りってⅤ・Ⅵのコルへと着いた。迷った分、遅くなってしまった。でも、そのルートが正解だったらしい。

 

【8月14日】 晴れ時々曇り、時々雨
熊の岩6:00-6:30八ツ峰Ⅵ峰Cフェース剣稜会ルート-8:30八ツ峰縦走-11:30八ツ峰の頭-北方稜線-剱岳本峰12:58-剱沢16:30

予定では、Dフェースでも登って剱沢に下山だったが、相棒が剱に登ったことがないとのこと。やっぱり八ツ峰を縦走して本峰に登りたいと言うので、全装で向かうことに変更。
全装ではDフェースはきついとのことで、Cフェースを登ることにする。Aフェースも登りたかったが、いったん下ってると時間のロスになるので却下。
再度、剣稜会ルート。自分が軽荷ザックでリード。相棒にはいつも重いザックで登らせてしまい、申し訳ない。
Cフェースの頭からは、トラバース道を登る。Ⅶ峰の頭では、渋滞が起こっていた。3つ前のパーティが懸垂時に振られて、下にいたメンバーにぶつかりクレバスに落ちたとのこと。下の様子は見えないが、メンバーが警察に電話している内容や、叫んで安否確認(返答ありで意識あり)をしている様子から事態が想像できた。ヘリコプターで救助されるまで、1時間以上、足止めを喰らった。
八ツ峰の頭から池の谷乗越へ下り、北方稜線へ。ノーロープで登れ、下りで大変なところは1箇所フィックスがあった。だいぶ時間をロスしていたので、明るいうちに剱沢へ着くだろうかとスピードアップしていたからか、あっという間に本峰の祠に着いた。素直にうれしかった。初めての相棒は、もっとだろう。無事に登頂できたことに手を合わせ、感謝する。
頂上はたくさんの人がいるのだろうと思っていたが、それほど多くもなかった。皆、それぞれのルートから本峰を目指し、辿り着いていた。
下山しながら思い出したが、剱は登りと下りのルートがところどころ違うのだった。鎖も一昔に比べるとだいぶ増えた気がした。雨も降ったせいか下りは長く感じ、剣山荘につく頃にはバテバテだった。
それでも、あと一踏ん張りして剱沢キャンプ場へ。剱沢キャンプ場は、剱がとても迫力満点で見えるので、いいテン場だ。
テントを張り終え、装備の後片付けをしていたら、なんとF田さんと遭遇。折立から縦走してきたとのこと。健脚ですね。アルプスって広いようで狭い。
下からガスがわき上がり、さらに剱をかっこよく魅力的に見せていた。今回は、なぜたくさんの人が剱に惹きつけられるのか、剱の魅力がわかった山行だった。

 

【8月15日】 曇り
剱沢-室堂-立山駅
朝6時半。キャンプ場にはラジオ体操が響き渡り、皆、剱に向かってラジオ体操をした。なんか新鮮。
雨予報だったので、雨にあたらないように急いで、下山。
今回、初めての剱バリエーションだったが、また来たいと思わせてくれた剱に感謝している。

 

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池の谷ガリーより朝日を望む
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三の窓よりチンネへ
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雲海と後立山
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クレオパトラニードル(左) チンネ(右)
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チンネの鼻
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チンネの頭
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八ツ峰Cフェース剣稜会ルート
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剱岳

 

 

 

 

 

 

 

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