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北岳バットレス 第四尾根主稜

2021年、Oさん、正月山行にバットレスに行きたいと言い始めた。年末試みるも寒波が来て、爆風でボーコンの沢の頭で敗退。テントの中も寒くて、耐えられなかった。

 

2022年、年末、再チャレンジ。天気はよかった。でも、北岳黒い。。。雪があれば雪稜となり登攀が簡単になるみたいだが、雪が少ないと難しくなるという。どう見ても難しいのではないかと思う。
昨年と比べて雪が少なく、BCまではらくに行けた。八本歯のコルまでも苦労なく行けた。大樺沢に向かって下りる。ここからはノートレース、膝~腰ラッセル。下部岸壁に向かってトラバースした。
ガイド本には「雪壁トラバースが少々長くなるがBガリーがよい。Dガリー側からだと横断バンドが悪く、思わぬ苦戦と時間のロスをしてしまう。」と書いてあるのに、見た目登れそうなのでDガリーに取り付く。やっぱり難しくて下降。Bガリーに移る。登ってみたら、Bガリーも自分のレベルでない難しさだった。A0しながら2ピッチ登る。うっすらと雪がかぶった逆層。わずかなスタンスやホールドに、前爪で乗るのもピックで引っかけるのも、緊張の連続で疲れた。もう正午だったので、タイムアウト。下部岸壁でこんなに時間がかかっていたら四尾根はどれだけかかるのか。。。Cガリーをトラバースせず、四尾根に取り付くこともできずに敗退した。こんなに天気がいいのに。。。
ラッセルしたアプローチ道を戻り、せめてもと登山道から北岳の山頂へ登る。2022年最後の夕日が沈むのをみんなで見送った。自分の実力のなさを痛感して、下山。悔しさだけが残った。

 

明けて、2023年。3連休、予報はいい。Oさんとリベンジに向かうことにする。いつもの自分なら、「え~!!また~?」と言っているだろう。でも、この悔しさを晴らすためには、行くしかない。バットレスに登りたいと心から思った。

 

【1月7日】快晴
夜叉神P 7:00-鷲ノ住山8:05 野呂川発電所 9:10-あるき沢橋10:05-池山御池小屋13:08-BC(EL2660)15:43

【1月8日】快晴
BC 3:45-八本歯のコル5:53-五尾根支稜7:00着7:30発-四尾根主稜11:45-登攀終了19:28-登山道合流20:45-BC23:50

【1月9日】晴れのち曇り、雪
BC 9:20-池山御池 10:35-あるき沢橋13:00-野呂川発電所13:40-鷲ノ住山16:10-夜叉神P 17:25

 

風はない。暖かく穏やか。春山のような陽気。でも、2週連続なので、だいぶ体が疲れてる。
今回は、五尾根支稜より取り付くことにする。五尾根支稜は夏にも登ったことがあり、簡単なイメージだったが、いざアックス・アイゼンで取り付くと、難しかった。でも、BガリーやDガリーの比ではなかった。

横断バンドは思ったより雪が安定していて、怖くなかった。Cガリーの雪稜を登り、やっと四尾根に取り付く。下部岸壁をなんとかクリアできほっとするも、これからである。

 

Oさん全リード。

凹角も夏とは印象が違い、難しかった。雪が少なく、ほとんどミックス登攀だった。アックスを刺すと、雪の層が雪崩れ、逆層の岩壁が現れる。逆層スラブに苦戦が続く。夏だと支点も豊富に感じたが、1,2ステップ遠い。カムを決めながら、ゆっくり慎重に前爪に乗る。たまに草付きがあると、すごくほっとする。ガイド本にはほとんどⅡ~Ⅳの「雪稜」と簡単に書いていているが、とても神経すり減らした。白いクラックも垂壁もA0しながら登る。難しかった。
唯一心が安まったのは、振り返ると富士山がきれいに佇んで見守ってくれたこと。ここ(バットレス)を登り切るんだという気持ちにさせてくれた。夕方、薄く朱に染まった富士山は、本当に美しかった。

 

マッチ箱まで思ったより時間がかかり、懸垂下降して、枯れ木テラスと城塞チムニーのあと3ピッチ。枯れ木テラスからは、ヘッデン登攀。リッジは馬乗りになって前進した。フォローだからいいけど、これリードするの怖いよね。

 

最後の最後に核心。城塞チムニーは、A0祭り、テンションして抜けた。今までで一番大変なクライミングだった。登ったというより登らせてもらったというほうが正しい感じ。登らなくても後悔、登っても後悔。もう自分の下手さ加減に悔しさ倍増。
でも、確かに自分たちはバットレス登ったんだ。Oさんと小さくグータッチして、雪壁を左上し登山道に合流。山頂踏みたかったけど、遅くなったのでカット。BCまで最後の力を振り絞る。行動時間が20時間。時間かかりすぎて反省。

 

夏は簡単な四尾根なのに。そう考えると、クライミングシューズってすごい!と、逆に笑えてくる。Oさん、「今度は雪が多い年に登って違いを確かめたい。」と言っていた。背伸びして挑戦したバットレスから、たくさんの課題を突きつけられた。雪が少ない難しい年に挑戦できたことで、自分に足りないもの、やらなければいけないことが明確になったことは収穫。今度行く時は、もっとスムーズに登攀できることを目標に頑張りたい。

 

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