黒伏山南壁 中央ルンゼルート
2016.10.15(土)~16(日)
参加者:morikazu、softtouch
あれは確か6月5日の沢登りの帰り道だったと思う。morikazuさんにどこの山に登りたいか尋ねたことがあった。そのときは具体的な返事はなかったが(たしか、滝谷、屏風、錫杖、黒伏の名前が出て、私も「黒伏いいですね・・・中央ルンゼや三十路を登りたい」と言った気がするが)、しばらくして「黒伏行きませんか?」とのメールがあった。一方、私の周りでも同世代の友人数名が中央ルンゼや三十路ルートを登っていたので、私もいつかは登りたいと考えていた。2人の目標が一致し、今回、一緒に黒伏に挑戦するに至った。
【10月15日】 晴
〇行程
7:00 P発
8:10 取付
9:20 登りはじめ
15:45 7p目から懸垂開始
17:00 取付
17:25 下山開始
18:25 P着
〇概要
P3に張ったテントの中、寒くて日の出前に目が覚めてしまった。と言ってもその後、二度寝してしまったようで、結局、morikazuさんに起こされたのだが。外に出てみると、夜中に小雨が降ったのか、テントや地面が少し濡れていた。また、昨日は暗くて見えなかった南壁の全容が見えた。南峰ピナクル、1185mピーク、そしてその間にあるルンゼが明瞭に。今日あそこを登るのかと思うと、胸がワクワクした。
朝食を簡単に済ませ、テントをたたみ、持って行くギアを確認して出発。P3から道路沿いをほんの少し登ると左側に柴倉・黒伏コース入口があり、そこから林道を下ると仮設の橋があった。橋を渡ってさらに林道を進むと、左手に大平黒伏登山道の踏跡があったので、そこからしばらく急登を歩いていった。平坦な道に出て数十分、沢状に出て右折し(少し分かりづらい)、5分ほどで水のないキビタキの池に。池の中央辺りに踏跡があったので、そこから急登を5分ほど歩き、中央ルンゼの取付に着いた。
取付に着くと、既に先行3パーティ(各3人ずつ)がいて、皆、中央ルンゼを登るとのこと。話をしてみると、どうやら山形のN川山岳会の方々で、その中に三十路の設定者の1人のE藤氏もいた。N川山岳会の方から、左にある象の鼻カンテ、右の赤いハングを直登するダイレクトルートなどの話を聞くこと1時間少々、ようやく私たちの順番が回ってきた。
1p目(30m、V+、softtouch)
ようやく岩にさわれて安堵したが、出だしの1発目ということで、気を引き締めながら慎重に登っていった。ハング間のオープンブックが核心のようだが、オープンスタンスで足を拾っていけば問題ないはず。先行パーティからの落石(握り拳や小石程度)が何度かあった。
2p目(30m、III、morikazu)
出だしから左上を2~3m登った後、残置に沿って右斜め上に登っていき三人テラスへ。総じてスラブのガバ帯。三人テラスで先行パーティ2人と一緒になったが(つまり、テラスの上に4人)、私たちが着いたときには既にリードの方が登っていたので、ここでまた待つことになった。
3p目(40m、5.8、softtouch)
最初の岩が浮いていて、叩くと鈍い音がした。出だしからの直登は落石の危険性が高いと判断し、一旦左にトラバースしてから元のルートに戻ることにした。しかし、15m登って#0.75のカムをセットして引いたところ、30cmの岩が剥がれ落ちた。下にはビレイヤーのmorikazuさんがいたが、ザックの後ろをかすめていったとのこと。当たらなくて本当に良かったと心底思った。このルートの核心はフェースから左に抜ける箇所。左足に良いフットホールドがあるので、それを使いながらのレイバックで問題ないはず。
4~5p目(III、morikazu)
50m以上、ひたすらスラブを登り、風の踊り場に着いた。ここからのルンゼ状岩壁は壮観で、紅葉も見ごろを迎えようとしていた。ここで、N川山岳会の3パーティ目の3人は降りていった。快適な場所なので、私たちはここで小休止いれることにした。
6p目(35m、V、softtouch)
残置を追いながら登ったが、どうやら右側壁に取り付くのが早かった模様。残置の確保支点があったため、そこでピッチを切ることにした(リードはハンギングビレイとなる)。
7p目(30m、5.8、morikazu)
6p目続きのバンドを斜上してもらい、テラスで一旦ピッチを切った後、垂壁手前へ。垂壁はガバではあるが、3p目と同じくらい脆く、しかも薄いフレークになっていていつ崩壊してもおかしくない状態だった。つまり、墜落荷重はかけられなかった。垂壁の後はバンドになっていて、直上でも良いが、左から巻くと登りやすかった。
7p目の終了点に着いたのが午後4時近かったため、これ以上登るのは危険と判断し、懸垂下降を始めた。取付に着いたら、夜空に満月が出ていた。
その後、N川山岳会の方から芋煮会に誘われていたので、柳沢小屋へと向かった。小屋に着くと、皆さん既に相当、飲んでいる様子。今回は新人歓迎山行も兼ねているとのことであり、岩を登らない方も含めると総勢11名。その中に天の川ルートの設定者のN毛氏もいて、5~6pを1つのピッチで区切ることや、沢状のアプローチ道を教えてもらった。その晩は小屋で快適に寝ることができた。
【10月16日】 晴
〇行程
6:15 トンネル前P
7:40 取付
8:15 登りはじめ
14:50 9p目終了
16:45 取付
17:3 0 P着
〇概要
この日は、前日に教えてもらった沢状からアプローチすることにした。トンネル近くのスペースに車を停め、ワイヤーケーブルを越えて側溝沿いに下っていった。5分ほどで足場が金属パイプの橋が現れ、それを渡った後は右側の沢状を歩いていった。登りを30分ほど歩くと登山道との合流地点にぶつかり、そこを左折して登山道を5分ほど歩いた。そうすると、キビタキの池へとつながる沢状に出た。通常であれば45分ほどのようだが、初めてだったこともあり時間がかかってしまった。
2日目は中央ルンゼを登り切ることが目標だったので、あまりフリーにこだわらず、時間がかかりそうなところはA0で登った。また、個人的に8、9pに集中したかったこともあり、その他のピッチの多くをmorikazuさんにお願いした(2p目のルート取りのミスについては猛省)。
8p目(40m、V+、softtouch)
出だしがハング。比較的良い左側のホールドをがっちり固めて登るのだろうが、危ないと感じてA0。さらに数m登ると、オリジナルルートは草に埋もれていたため、天の川ルートに合流すべく左上。このとき、灌木が支障となって抜けるのに時間がかかってしまった。灌木を左に越えた先の上が小ハングになっていて、ここは絶対に落ちられないと思いA0。右足を決めると上体が安定するので、後は奥にあるポケットを取って終了。後でトポを見てみたが、やはりこのピッチはA1のようだ。
9p目(20m、5.10b、softtouch)
いよいよ最終ピッチ。中央ルンゼに戻るべく、最初、右にトラバースした。下部は予想通りのスラブだったが、ルート中間部、一部分ではあるがフェースが出てきた。直線上に残置があるので、ルートは間違っていないはずだが、明らかにこれまでのルートのグレードとは異質な感じがし、中央ルンゼの核心部と思われた。時間もないので、「F*ck!」と言いながらA0で登った。ここのムーブを解決できなかったことが心残りだ。草付になりはじめたところに終了点のハンガーとリングが見え、今回の登攀が終わった。morikazuさんも登ってきて握手を交わした。
帰り道、作並温泉に入った後、近くの焼肉屋にごはんを食べに行った。お店の名前が「満月」で、1日目に見た月の情景が思い出された。
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